「いらっしゃいませー」

親しみやすいアットホームな雰囲気の喫茶店
コーヒーの匂いが心地よい空気を作り出している
そこにコートを着てタバコを蒸した銀色の髪の女性が入ってくる

「久しぶり、ユーラナス」
「あ、ユキ姐」





【ice tea】




とりあえず、カウンター席に着き、差し出されたコーヒーを一口いただく
少し熱そうだったのでふーっと息を吹きかけてから

「喫茶店ねえ・・・・・ま、カモフラージュにはいいんじゃない?あんた未成年だけど」
「そそ、大変なのよ、情報屋も、あんまり大きく活動できないし」

妹、情報屋、喫茶店経営中
姉、殺し屋、とある支部に在中


「まあそうなんでしょうねえ・・・・・コーヒー美味しいわね・・・・」
「でしょ?最近コーヒー入れるのにはまっちゃって」
コーヒー豆いろいろ集めたのといって、瓶が目の前に5、6個並ぶ
素人目にはほとんど違いが分からないのだが、一応相槌をうっておく

「んでこの機材とかは?結構いいものっぽいけど」
「ああ・・・・・あいつ作ってくれたのよ、機材は」
「あの彼氏さん?」

急に妹の顔が赤くなる、すごい分かりやすい

「だからそんなんじゃなくて・・・!!」
「じゃあどんなん?」
「・・・・・いや、嫌いじゃないし、あたしいないととは思うけど・・・
って、何言わせられてるのあたし!」
「自分で自白したくせに」

にやにやと笑いを浮かべながら姉はコーヒーを口へ運ぶ
さっきほどコーヒーは熱くなく、するりと口の中を潤した
不自然なほどに早く冷めて

そのままコーヒーを飲み干し、口周りを拭いた後

「さて・・・・本題に入ろうか」
「・・・何の用事で?」

姉は横に置いてあった鞄から書類を取り出す
数十人ぐらいの名前がずらーっと並んでいる

「こいつらのデータと居場所ちょうだい」
「いくらで?」
「10万」
「よし、まいどありー」

そう言って妹は奥へ引っ込んでいき、何分かしたら何枚か資料を抱えて出てきた。

「えっとこれが○○で・・・こっちが△△・・・・後は自分で見て下さい、情報屋が関われるのはここまでですので」
「十分よ、ありがと」

資料を受け取り、そのまま鞄へしまう

「そういえばその鞄何入ってるの?」
「あー、うん、色々、ここで見せたら捕まるものとか、護身道具とか結構ヤバいものとか」
「・・・・詳しくは聞かないことにするわ」
「聞かれても答えられないけどね」

そう言いながら荷物をまとめ、席を立った

「んじゃ、そろそろ行くわ、コーヒーありがとね」
「お金は払っていってよ?」
「分かってるわよ・・・・・・はい、ごちそうさま」

財布から出した小銭を置いて、そのまま店を出ようとする

「あ、ユキ姐、ちょっとまって」
「ん?」
「・・・・・人殺すって、どんな気分?」


その質問に表情を変えずに少し間を置いて

「・・・・そんなの、とっくに忘れたわね」

最後にほほえみを残してそのまま店を去っていった


それを見送って、見えなくなったあたりでユーラナスは一息つき

「さてと・・・・・片付けるか・・・」

ランチタイムが終わって人がいない喫茶店の片づけを始める

そして、姉の飲んでいたカップを持ち上げるとボロボロと氷が潰れたように砕けた

「ったく・・・・・・人の店の備品壊さないでよ・・・・」


その冷えたカップはどんな意味を持ったのか
彼女の心は誰にも分からない








昼時の街中を歩く
外は少し冷えていて

「・・・夜雪降るかもね・・・ま、いい仕事日和でしょうね」

そのままポケットからたばこを取り出して火をつける
煙を肺に入れて、吐き出す、こうしてるときが一番落ち着く

「・・・・寒いわね」


彼女は何を思うのか、その表情は何を語るのか


そのまま彼女は昼の街へ消えた

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