2月14日、わかってる、今日が何の日かぐらい、だけど
そう意識するとやっぱり・・・

「いざ作るとホント恥ずかしいわね・・・」

そんな悩みを抱えて、一人
ユーラナス・アルジェリーは小さなチョコレートの入った箱を持ったまま自分の部屋のキッチンの前に立っていた

正直自分がこんな乙女チックなことすることになるとは、色々と感傷深いものを感じる、作った数は当然一個、誰にあげるのかは・・

「・・・食べてくれるかな、ジール」

ジール・バレンシルクロス、学校卒業後も学校に残って研究員をやっている、
でも大体毎日うちの喫茶店(まあ情報屋ですけど)に来てはコーヒを飲んで帰って行く、
あたしと姉は物心付いた頃にはバレンシルクロス家に預けられ、親の顔も行き先も知らないまま、
それをいつか知る為に今は情報屋をしている、そしてバレンシルクロス家に預けられた事で
あたしとジールは家族のように育てられて来た、
そしていつからか、奴の事を意識し始めていた、悔しいけど、ほんと何で惚れたんだろうとかたまに思うけど。
まあ好きなもんは仕方が無い。

とりあえずお菓子なんて作るのは初めてだったので姉に聞いた作り方どおりに作ると出来たちょっぴり苦めのチョコ
姉曰く「少しぐらい苦い方が男の子の好みに合うのよ」だそうだ、とりあえず、
少し味見してみたけどそんなマンガみたいに毒殺できるようなものではなかったし、食べれるし、うん、きっと大丈夫だ。多分







「マド先生ホント人使い荒いんだよなあ、生徒じゃなくなったとたんこれだよ・・・」
「甘やかすとあんたホントにダメ人間だからちょうどいいじゃないの」

喫茶店、ありがたい事にとても繁盛中、
そしてお昼過ぎの2時、客の入りも落ち着いた時に奴は来る

「なーなー、この店ランチメニューとかねーの?」
「うちが料理そんなに出来ないと知って言ってるの?」
「だからバイト雇えって、できればメイドさん」
「バイトは考えてもいいけどメイドさんにはしないわよ、というかメイドさん雇ったらあんた仕事しないでずっとメイドさん拝む気でしょ?」

いつもと同じようなやりとり、特別でもなんでもない、だけどこの日常がとても幸せ
そして脳内シミュレーション通り、ちょこっとバレンタインの話題を出す

「そういえば、今日バレンタインデーだったけど誰かから貰ったの?」

とりあえず多分見た目はともかく性格的にモテないだろうから、きっと貰えてないはず・・・というかそれなら何処に惚れたんだろうあたし・・・

「んあ?貰ったよ?」
「・・え?」
「・・・・・なんだよその顔」
「え?あんたが?ホントに?」
「あれだぞ?上司からの思いっきり義理って張り紙されたチロルチョコだぞ?」
「・・・・・それは悲しいというより空しくない?」
「うん、とっても空しい」

ふうっとため息をはく、だけど何処か嬉しくて・・・

「しょうがないなあ、はい、チョコあげるわよ」
「え?マジで?いくらしたの?」

ごんっ
やば、いつもの癖で思わず手がでちゃった

「あ、ごめん、でも幾らとか普通聞く!?」
「いてえ・・・いや、とりあえず義理だから買ったのでいいやってタイプだしお前」
「・・・・手作りよ」
「え?声小さすぎて聞こえなかったんだけど」
「だから手作りっ!悪い!?」
「いえ・・・めっそうも・・・てか作れたんだお菓子とか」
「当たり前じゃない!、作る余裕もあったから作ったのよ・・!」

これ以外作れって言われても無理だけどね、ちょっぴり嘘をついた
というかなんでかいつも奴の前だと気強くなってしまう、間違いなく素直になれてない証拠、分かってるけどきっとしばらくはこのまま

「とりあえずサンキュー、食っていい?毒とか入ってない?それと観賞用とかじゃない?」
「いいから食え!」
「は、はい・・・・・おお、普通に美味い・・・」
「・・・ホントに?」
「うん、想像してたよりずっとうめえ、ビックリしたわ」

自然と顔がにやけてしまう。こんな顔を見られるのは少し恥ずかしい

「まあよかった、喜んでもらえて」
「なんだ、やけに素直だな、珍しく」
「いいでしょ?たまには」
「まあ普段があれだからな!」
「うっさいっ!」

きっとしばらくはこんな感じの関係、だけどいつかは伝えられればいいな、いつになるかは分からないけど
今は甘く苦い関係で
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