とある、春風の吹く春の日
コヴァマカの街の中にて


「ふう、街に来たのはいいけどこれからどうするかねえ・・」


てか、カシスとスカイとはぐれただけなんだけどな・・・・・



辺りを見渡し、やっぱいねえなあ・・・と思いながらジール・バレンシルクロスは歩く

今日は花火大会があるという話を聞き、カシスとスカイを誘い、町へ来たまではよかったのだが・・・

「俺がクレープに目がくらんでるうちに誰もいねえんだもん・・・」

俗に言う、放置プレイ

さてここからどうするか・・・・と考えてると前のほうから見慣れた人影、どこか他人とは思えない彼


「あ!ジール、ちょうどいいところに!」

「あ、キルシュか、どうしたんだ?」

「その話はあとだ!ちょっと来てくれ」



そのまま引きづられて連れ去られるジール

「ちょいまて!どこに行くんだお前は!」

しかしその言葉は空に響いたまま彼に届くことはなかった





「おいキルシュ」

「なんだ?」

「とりあえず訳を話せ、迷子にでもなったか?」




実際、ジールも迷子と変わりはないのだが

「何いってんだ!そんなことはしょっちゅうだ!」



キルシュが自慢げに言う


「まあ、おれもしょっちゅう迷うし」


クラスでもトップを争う馬鹿コンビ、でも迷子は自慢することじゃないとは思うがそんなこと二人には関係なかった


「で、迷子以外に理由はあるのか」

「ああ、一時間前に・・・・」




===1時間前===



キルシュはアランシアと街へ来ていた
この幼馴染コンビ、傍目から見てもアランシアが必死でアピールしてるのがわかるのだが
キルシュの気持ちがキャンディに一直線なのでまったく気づかれない

「あ〜おもしろかったね〜」

「ていうか、お前の行きたいところしか行ってないから俺はおもしろくない」

主に楽器屋、服屋、ケーキ屋
キルシュの意見はどうやら尊重されなかったら
しい




「え〜結構面白かったよ〜服売ってる店とかさ〜」

「あのなあ・・・・」

「まあいいや、じゃあそろそろ帰ろ〜」

「スポーツ店・・・」

「なんか言った〜?」
「いや、何でもねえ、んじゃ帰るぞ」

どうせ言っても行かないだろうし・・・

「うん〜ってあれ?・・・・・・・・あ〜〜〜〜〜〜!!!!!」



いきなり真横で大声を出されキルシュは少し耳を押さえながら



「な、なんだよいきなり」

「・・・・・・・・キーホルダー落とした・・・・・・」

「・・・はあ、キーホルダー落としたくらいでそんな騒ぐな」



キルシュの言葉にアランシアは目に思い切り涙を溜め、今にも爆発しそうなその顔で



「・・・・・・・キルシュのバカぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!!」


そう言って泣きながらアランシアは去っていった



「なんで帰ったんだろうな」

「それがわからねんだよ・・・」

「で、それを探すのを手伝えと?」

「おう、よく分かったな」



流石にそこは誰でもわかると思う

そんな感じで2人のキーホルダー探しは始まった



「とは言ったものも、どこから探すんだ?結構広いぞ」

「そうだな・・・・・・まあ、まずは何か食おうぜ」

普通はつっこまれてもいい言葉に



「いいねえ、何食う?」

「ラーメンでも食おうぜ、探す前に軽く腹ごしらえだ」
「おう!」
そのまま満場一致でラーメン屋へ入っていく二人






「・・・・・なあ、カシス」

「何だ?」

「・・・もう帰りたい・・・」

「・・・帰ったりしたら後ろにいる二人に殺されるぞ、俺たち」


後ろから明らかに感じる殺気、誰に向けてでもないが、ただただ大きな殺気が放たれていた
なぜこんなことになったかというと・・・



==10分前==


「・・・ジールいねえ・・・」

「完全に迷子だな、あいつは・・・・」

一応探しはしてるが、もう正直どうでもよくて

「で、どうする?」



カシスの発言に二人はしばし考え込んで


「「ほっといて帰るか」」


という結論に至った



「確かに探すのも面倒だしな」

「そう、勝手にいなくなる奴が悪い」


そういうことで寮へ帰ることにし、街外れへ向かおうとしていると


・・・ジール発見(キルシュ付)


「・・・・・・・どうする?キルシュもいるし」

「つーか俺としてはあとで何か起こされて俺らのせいにされるのだけは御免なんだが」


合流するか否かで悩んでいると、後ろのほうから声がして


「あ、スカイとカシス〜、いいところに〜」


こののんびりした声、明らかにアランシアだ


アランシアがいて、キルシュが別行動→明らかに喧嘩中→巻き込まれること必至→選択肢:1、素直に振り向く 2、気づかなかったように逃げる 3、とりあえずどちらか生贄へ 4、なぜがそこらへんにいたピスタチオに摩り替わって逃げる


選択2と4で意見が分かれる

(絶対2の方が早いって!)

(いや、4の方が・・・・)

そんなことしているうちに足音が近づいてきたので、入れ変わること不可能と判断し2に決定




と言う事で一目散に逃げようとすると


「逃げるな」

この声アランシアじゃねえ!と思って思わず振り向くと
いつでも魂のエクレエム発動OKな状態のアランシアと
確か隣のクラスでジールの幼馴染のユーラナス・アルジェリーが立っていた

選択、強制的に1へ



ということでアランシアの話を聞くことになった(半分脅しにかかった状態で)

さっきの話を聞いて

「なるほどな、そういうことな・・・・」


「でも何でユーラナスいるんだよ」
「いや、仕事先にアランシアが泣きながら飛び込んできて・・・・・・・・・・・・ジールも心配だったし・・・」


最後のほうをものすごい小さな声で言う、聞こえたけど聞こえてない振りをして置こう


「でもさ、そのキーホルダーそんなに大切な物なのか?」

「うん〜、だってキルシュにはじめて貰ったプレゼントだもん〜」

「「プレゼント?」」

「うん、確かあれは6歳の時・・・・・」





===9年前===


「あ〜ケ−キ美味しかった〜」



その日アランシアの家では誕生日パーティをしていた


「ったく、お前が一番でかいチョコを食いやがったしな」

「いいじゃん〜、今日は私が主役なんだから〜」




そんな感じでいつものように笑いあい、散歩するということで街を歩き、ふと通り過ぎた店のショーウインドウ

「あ〜すごい大きいケーキだ〜、食べてみたいな〜」

「バカ、これはウエディングケーキって言うんだよ」

「ウエディングケーキ〜?」

「これは結婚する時しか食えねんだ」

「へ〜いいな〜食べてみたいな〜」

目をキラキラ輝かせながらアランシアは言う



「お前じゃ一生無理だ」

「え〜食べたい〜!!」

「・・・・・・・たくわかったよ、俺が将来お前をお嫁さんにしてこのケーキを食わせてやるよ」

「え〜〜ホント〜?約束だよ〜」

「ああ、約束だ」

「うん〜ありがと〜」



そしてキルシュはポケットから箱を取り出して
少し恥ずかしそうにそれを差し出して


「ホラ、誕生日プレゼント」

「あ〜、ありがと〜開けていい?」

「いいぞ」



そして箱を開けると


「あ〜小鳥のキーホルダーだ〜、ありがと〜キルシュ」

「大切にしろよな、無くすなよ!」

「わかってるよ〜」


少し照れた彼の顔が印象的だった


「へえ、そんなことがあったんだ」

「でもなんでその時が初めてなんだ?」

「だってキルシュ、毎年用意してるくせに、恥ずかしがって出さないんだもん〜」

「なるほどね・・・・・」

まあ、あいつが素直に渡すとは思えないし・・・




「つーか、自分で言ったこと完全に忘れてやがるな・・・・・・」



なにしろ今、キルシュはキャンディのことが好きなのだ

本人はばれてないと思っているが、キャンディ以外のほとんどがわかっているこの事実

「で、これからどうするつもり?」

「見つけてくれるまで許さない〜!」

微妙に黒いオーラが見えたけど気のせいということにしておく



「でもさあ途中で帰ったらどうすんの?」

「だからさ〜後つけていこうよ〜」

「「え!?」」


「いいじゃん〜どうせ暇でしょ〜?」


どうせ暇って・・・・・

「う〜〜〜ん・・・」

「まあ・・・・・な」


と言う事で半場強制的に2人のあとをつける事になった・・・・


そんなこともつゆ知らずジールとキルシュは


「あ〜ラーメン美味かった〜!」

「やっぱここの店のラーメンは最高だね!」



そしてジールやっとこさ本題を切り出した


「で、どの辺に落ちてるんだ?」

「知らん」


「じゃあ今どこに向かってるんだよ」

「美味そうな匂いのする方へ」

「・・・・・探そうぜ、ちゃんと」




そしてこちら後続(スカイ、カシス、アランシア、ユーラナス)

「・・・ジールってたまーにまともな事言うよな」
「ほんとたまーにな・・・・」

とりあえずうえのほうで顔出してるユーラナスに

「昔からあんな感じ?」
「うん、相当昔からね・・・」
「そっか・・・苦労したな」
「ホントね・・・」


そういって彼女は大きくため息をついた





んで馬鹿コンビ


「おーい、ジール、これ美味そうだな!」

「お、いいじゃん、食ってみるか!」



・・・・・・さっさと探せ・・・


「スカイ・・・・離れてるんだし、口でつっこめ」

「だな・・・・」


「も〜キルシュ、早く探してよ〜」



アランシアが呆れたように言う




確かにキルシュたちをつけ始めてはや2時間

しかし、一向に探す気配がないキルシュたちに少し苛立ちを感じ始めた後方組



「ていうかさ、場所分かってんだろ、自分で探しにいけよ」


カシスの言葉にアランシアは

「だめだよ〜それじゃあキルシュに探させてる意味ないじゃん〜」

「そうそう、こういうのはキルシュ君が見つけてそれを渡すのがロマンチックなんだし」

・・・・・ていうかわざと無くしてんじゃ・・・・・・

そんなことはつゆ知らずのキルシュたちは


「は〜、食った食った〜!じゃあキルシュ、帰るか!」


――――パコン!!――

「バカ!これから探しに行くんだろ!」

「・・・・・わかったよ・・・・・」


キルシュからのいきなりのツッコミに少しビックリしながらジールはキルシュに言った
なんか少しだけキルシュ以外の攻撃もあった気がするんだけど・・・気のせいか

「ねえ、流石に魔法はバレるからやばいと思うんだユーラナス」 「ごめん・・・つい・・」


そして2時間半遅れでなんとかキーホルダー探しが始まった・・・・まではよかったんだけど・・・・・



===30分後===


「キルシュ」

「ん?なんだ?」

「俺さあ、さすがにゴミ箱の中にはないと思うんぞ」

「でもよ、屋根の上にもないと思うぞ」

「そうか?」

「当たり前だろ」

どっちもどっちだと思うけど、そう考えるのも面倒になってきた後方組




そのあとしばらく探してみたものも・・・



「見つかんねえなあ・・・・」

「どこあるんだ・・・・・」



そして二人はしばし考え込む・・・・・


「「う〜ん・・・・」」



そのころ



「なんで見つけれないんだろ〜〜〜?」

「なあ、どこに落としたんだよ?」



カシスがとりあえず聞いてみる


「えっと実はね〜・・・・・・・・・・」


その答えを聞いてカシスは


「それってすぐ見つかるんじゃ・・・」

「だからなんで見つけれないのかなあ〜って思ってるんだけど〜」


・・・・微妙に乙女心が怖くなった


「で、スカイはどこだ?」

「あ〜、私の身長じゃこの塀から顔出せなくて〜」



といって下を指す


「あの・・・・・・結構重いんですけど・・・・・・」

「文句言わないの〜!」

「グフッ!」



アランシアに踏み台にされていたスカイはなんかかなり理不尽な理由で

アランシアの踏みつけを喰らった


「・・・・流石に踏みつけるのはどうかと思うんだ、アランシア・・・」
「だって女の子に重いとか言うし〜」

スカイにとりあえず合掌







「ねえなあ・・・・」

「あのなあ、花火用の大砲の中にはないだろ」

「ま、もしものことがあるからな、よっと」



といってジールは大砲の中へ顔をつっこむ


「おーい、無いだろー」

「無いなあ・・・あれ」
「どうした?」
「・・・・抜けない・・・」
「どうするんだよ・・・」
「何とかしてくれ・・・キルシュ」

うーむとしばらく考えて出た結論は・・・

「・・・ホットグリル!」
「どうした?魔法なんか発動させて」

「・・・・・・生きて帰ってこいよ!」

「えっ何・・・・・・・」


大砲の導火線へ着火
ロープはどんどん燃えて行き・・・

大砲は仕込まれていた花火と共に
そしてジールは空の彼方へ花火と共に飛んでいった

「キルシュてめえ〜〜〜〜〜・・・・・・・・」


キールの声は大空へ消えていった


「・・・・達者でな」




空を見上げ、敬礼のポーズをした、あの空の向こうにいるジールへ向かって

「さ〜て疲れた・・・・・んあ?ポケットになんか入って・・おお!」

そこにあったのはキーホルダーだった

実はアランシアが、二人で歩いてるときお忍びでポケットへと入れていたのだった


「ま、キーホルダーも見つかったし、一件落着!さ、アランシア探すか」









「やっと見つけた〜キルシュのところ行って来る〜」



すごい機嫌よさそうにアランシアはそのまま去っていった


「・・・・・・・疲れた・・・・・・」

「俺、腕上がんないし・・・・」
「・・・お疲れ、二人とも・・・」
「で・・・ジールはいいの?放置プレーで」
「大丈夫、たぶん生命力はキルシュ君並にあるから」
「・・・・・なら大丈夫か」

そして3人もそのままこの場を後にした










=====数日後=====




「ただいま・・・・」

「あ、生きて帰ってきた」

教室へ戻って来たジールは酷くやせていて、軽く磯の香りもした



「飛ばされて落ちたのが海だったからよかったけど・・・三日間泳いだ・・・」

「よく2日も溺死しないでいれたな・・・」

スカイが感心したように言う

「そのあと見知らぬ街に着いて、そっから山2つ越して・・・遭難したけどさ、やっと着いたんだからな・・・」
「しかも数日何も食ってないから腹が・・・・」

そのまま、ジールは保健室へ運ばれ、復活までさらに2日かかったという・・


−終わり−

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