ふと夜になって、世界に一人みたいになって

この場にいるのがとても恐くなる事ありますか

いつもは安心させてくれる月の光が、今日はただ恐くなって

そんな時、愛しいあの人に会いたくなって



【眠れない夜を抱いて】



とある日の夜、しーんと静まり返った寮の部屋の一室
そのベットの上にマイナは横になっていた、いつもなら寝ているような深夜2時、だけど今日はなぜか眠れなくて
横のベッドのキャンディをみてみるけどとっくに寝付いていて、マイナは夜空に浮かぶ月を見上げながらため息をついた

「寝れない・・・・・」

昼間にとくに昼寝したわけでもないし、ましてはホラー映画をみたわけでもない
だけど原因ではないが、こんな夜は常に頭によぎる人がいる
彼はもう寝ているだろうか、それとも私の事を思ってくれたりしているのだろうか

こんな事を一度考えはじめるとどんどん逢いたくなる、彼と一緒にいたくなる、彼が欲しくなる
そんな考え、自分勝手だとはわかっているのに、こんな時間に会えるわけ無いのに、理性などこういう時には何の留め金にもならなくなる
気付けばパジャマから着替えて、部屋の外へ出ていた




暗く続いた廊下、自分の足音しか聞こえない、自分は今何をしているのだろう、何処へ向かおうというのだろう、ただ冴えた瞳だけが行き先を知っている気がした
足はそれに従うだけ、自分の体が今だけは自分の体じゃないように歩みを進めていた

そういえば彼の同室のディンは今日はどっか出かけてて夜はいないとか昼間に彼が言っていた気がする
そしてふと頭によぎった妄想

「・・・・何考えてるのよ私・・・」

顔がかあっと赤くなるのが分かる、耳たぶが熱を帯び、頭が何かぼーっとする
彼に逢いに行って何をするつもりなのか・・・・そんなよからぬ想像をした自分がもの凄く恥ずかしくなる、だけど歩みは止まらず、そのまま暗い廊下をただただ突き進む

この時間は寮の管理人も眠っていて、ちょうど見回りの先生も見回りを終えて仮眠をとっているとクラスメートのカシスが言っていた
寮から抜け出すある意味プロの発言どおり、確かに足音も聞こえない、ばれると怒られるだろうなあとか考えながらも少しワクワクしている自分が居た

寮の渡り廊下を抜け、男子寮へ入り、彼のいる部屋へ向かう、改めて自分は何しているのか、そしてここまで来る自分の行動力にびっくりしながらも、気付けば彼の部屋の前

「来てしまった・・・・」

とりあえずせっかくなのでノックをしてみる
最初は小さくコンと一回、次は少し強くしてコンコンッと
しばらくすると足音が部屋の中からドアに向かって聞こえてくる
そしてドア越しに

「誰?ディン?」

一瞬ビクッとしたが、とりあえずは返事をしないと行けないと思い

「私」

少しの間の沈黙の後、ドアがガチャリと開き、彼・・・・スカイが驚いた様子で

「・・・どうしたのマイナ、こんな時間に」
「私もよく分かんないけど・・・・気付けばこの部屋に来てた・・・」
「・・・・まあとりあえず入れ、見回りの先生来るとやばいし」

そのまま招かれるまま部屋へ入る
作りは同じはずの部屋はなんだか昼間来る時よりも狭く、だけど不思議と優しく感じた

「んで・・・・どうしたよ?」
「・・・寝れなくて・・・何か・・・逢いたくて・・・」

いつもよりも正直に、自分の思っている事が口に出た

「・・・そっか・・・」
「何でだろ・・・別に昼間スカイみたいに寝てるわけじゃないのに・・」
「うっ・・・イヤ、俺だってただ寝てるわけじゃないぞ、空とかみてたら自然とこう・・・・」
「もう授業で寝るとか以前の問題でしょそれ・・・」
「授業半分出てないしな」

他愛もない話、だけど凄く心地よくて
二人でベッドに座り、そのまま彼に寄りかかる
彼はなにも言わずに、ただ頭を撫でてくれた
それがとても安心できて、自然と笑みがこぼれる

「添い寝してあげようか?」

また顔がかあっと赤くなる、だけどやっぱり自分がどう考えてるか考えると自然と答えはあっさりと出て

「うん・・・・」




眠れない夜、だけど今はぐっすりと眠れると思う
居心地の良い場所、安心出来る人、愛しい彼、横で見守ってくれるから、今日はおやすみなさい、目が覚めて最初に見るのが彼の寝顔でありますように

愛しいあなたでありますように




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