「そろそろ帰ってくるかなあ・・・」

スカイがそう呟く

家で作業組のほうは順調に進んでおり
そろそろ一段落付けそうな状態だった

「あ、噂をすれば・・・」

「ただいまー」
「お菓子買ってきたよー」

街からシードルとシズクが帰ってきた

「・・・・お菓子買いに行かせたの?」
「うん」
「・・・今日人使い荒いね、スカイ・・・」

マイナが呆れて言う、普段あまりリーダーシップ取りたがらないので
今日のようなスカイの人使いの荒さは結構珍しい

ふう、と息を付いてスカイは立ち上がり

「さーって、じゃあ休憩するか」
「疲れたー、肩痛くなってきたよ」
「久々にこんなに働いたな・・・」
「まだ終わってないんだよなあ・・・」
「みんなお疲れ様・・・駄目、腰が痛い・・・」



みんなそれぞれの反応を見た後
シードルとシズクの方を見ると、そこには微笑みあっている二人がいた


「・・・・・・・二人にいかせて正解だったな」

ひとりそっと満足し、みんなより遅れてリビングへ向かった








その後も作業を続け、3時頃には一通りの作業が終了した

「あーっ、やっと終わったー・・・・」
「長かったねえ・・・・・・」

思えば休憩入れても半日は作業していたわけで、正直授業よりも辛い
空はほんのり昼色からオレンジになりかけていた

「で・・・・・どうするの?スカイ」
「どうするって?」
「スカイはここに泊まっていくの?」
「あ、うん、とりあえずは明日シズクと一緒に帰るつもり」
「そっか・・・・・・」

少し寂しいかも・・・・

「とりあえず、汽車の時間までまだけっこうあるし、みんな村見て回ったら?」
「・・・・そうだな、見ていくか」
「ディン、案内頼んだ!」
「なんで俺なんだ・・・・」
「いいから、どうせさっきシードルとシズクは見てるしさ、とりあえず俺らを案内してくれ」

そういってずるずるとディンを引き連れて外へ行ってしまったカシスとキャンディ

「夕方まで帰ってこいよー・・・・・・ふう、んでシードルはどうする?」
「僕は・・・・・休んでるよ、疲れたし・・・」
「じゃあ私も家で休んでるー」
「シードルとシズクは家にいると・・・・」

・・・・私はどうしようかなあ・・・
そうマイナが悩んでいると

「じゃ、マイナ行くか」
「へ?どこへ?」
「ちょっと連れていきたいところあるから」








陽は既に傾き、ほんのりオレンジ色になろうとしている頃
二人はスカイの家より少し離れたところにある山を登っていた

「どこ行くの?」
「まだ秘密」

さっきからどこ行くのか、いくら聞いても「秘密」と返されている
そこまでして行く場所ってどこなんだろう
明らかに街からは離れているし、そもそもここは山だ
さっきから建物の一つも見当たらなく、周りは全部森

そうしてしばらく二人並んで歩いていると一か所光の差している場所があった

「着いたよ」
「ここ?」
「うん、ここから海側見て」

そう言われて見た景色は
多分これから一生記憶に残り続けると思う

「わぁ・・・・すごい夕日・・・」

海を赤く染め、街は紫のイルミネーション
森は赤く染まり、空はオレンジ色に変わっていた

だけど、こんなに綺麗な、こんなに心に残る風景は初めてだった
なぜだかうっすらと目に涙が浮かんでくる

「ここさ、小さい頃一人で山登ってたら見つけてさ、俺しか知らない秘密の場所」
「ディンも知らないの?」
「うん、教えてない」
「じゃあなんで・・・・・?」
「・・・・・なんだろう、マイナにだけは教えておきたかったのかも」

顔が赤くなってるのがわかる、涙浮かべて顔赤くて・・・・・人に見せれる顔じゃないよ、今・・・・・

「でもホントに綺麗・・・・・・」

そのままずっと時がとまっていてほしかった
何時ものように、だけどいつもとは違う彼の隣

・・・・・・ああ、そうか
あたしはずっと、ずっとこの隣にいたかったんだ・・・・・

徐々に徐々に夜がやってくる、オレンジも闇色に変わる
夕日も海へ沈み、赤い海も闇に解けていく
時間は待ってくれない、永遠にここにいたいと思ってもそれは叶わない

「じゃ・・・・・そろそろ行こうか」
「・・・・だね」

そう言ってマイナとスカイはその場から離れようとする
そしてこちらを見て微笑んで

「・・・・・スカイ、ありがとう」
「・・・おう」


そう言って坂道をかけていく彼女を見つめながら聞こえないようにボツリと

「・・・勇気出ないな・・・・・・俺」

隣にいてほしいと思う、一つの想いでは足りないかもしれないけど
二つの想いなら、何時の日か叶う時がくる、そう信じたかった

空はもう蒼く暮れかけていた












そして駅の前に集まったスカイ、マイナ、カシス、ディン、キャンディ、シードル、シズク

「さて・・・・・帰るか」
「いろいろ見て回れた?」
「おう、バッチリと」
「以外と詳しいんだよね、ディン」
「何年も住んでればそりゃあ詳しくなるっての」

ため息まじりにディンが言った、苦労がほんとに絶えないと思う、彼は

「とりあえず、ちゃんと休み明けまでには帰ってこいよ」
「大丈夫だ、明日の夕方には帰るから」
「シズクちゃんも、こっちの学校来たらよろしくねー」
「はい、よろしくおねがいします」
「じゃあ、そろそろ行くね、また学校で」
「うん、またな」

そのまま汽車へ入っていきドアが閉じるまで手を振っていた
汽車を見送りながらスカイはシズクに

「・・・・な、いいやつだったろ?」
「うん、学校楽しみになってきたー」

そして二人は自分の家へ戻っていく、久々の家族団欒、精いっぱいくつろごうと思った












そして休み明けの学校


「大変だ大変だ大変だ!」

セサミが叫びながら教室へ飛び込んでくる

「どうしたブラザー!」
「ナンダ、ドウシタンダ?」

セサミは息を整え、大きく深呼吸をした後

「このクラスに転校生くるっ!」

一瞬クラスの空気が止まった

「え〜、セサミほんとに〜?」
「てんこーせー」
「転校生だヌー」

ものすごい盛り上がってるが、その中でも一際輝いているのが

「男か!女か!」
「女だぜ兄貴!」

まあ当然キルシュであった、さすがに朝からこのテンションは尊敬に値すると思う

と、ここでスカイが教室に入ってきた
いつも学校に来るのは最後の方になるスカイ、教室に入るとすぐさま

「おいスカイ!転校生だぞ転校生!」
「そうだぞ!やばい、すごい楽しみだ!」
「・・・・・・・朝からうるせえお前ら・・・・」

華麗にそのままスルーして席に着く、事前に知っている5人はひどく冷静だった

「こう言う反応、久しぶりだねえ・・・・」
「テンションが急上昇したからね・・・・」
「こういうの傍観してるの面白いよなあ」
「・・・・・・てか流石に五月蝿いぞこれ・・・」

しかし、この喧騒はマドレーヌ先生が来たことによって一気に静まる

「はーい、みんな五月蝿いぞー!あと3秒で席着かないとスペースライトだぞーv」

一瞬で全員着席したのは言うまでもない

「さーて、もう知ってると思うけど今日からこのクラスに転校生が入ります、じゃ、シズクちゃん入ってきてー」

そうして入ってきたのは金色の肩口でカールした紙にピンクの帽子の女の子、正直文句なしでかわいい
そしてその笑顔から出た言葉に、あの時と同じように何も知らない彼等は驚くのだった

「シズク・セットウインドです、みなさんどうかよろしくおねがいします」




・・・・・・・・・・・

「・・・・あれ、セットウインド?・・・・あれ?」
「まさか・・・・・・」

『スカイの兄妹!?』

一斉にみんながスカイの方を振り向く

「・・・・・・・・いや、だから普通に兄妹ぐらいいるっての・・・」





その後、質問攻めにあうシズクとスカイを見ながらマイナとカシスは

「・・・・・・やー、やっぱ楽しいなこれ」
「ドッキリばらす人の気持ちってこんな感じなのかな・・・・」
「シードルはシズクしか見えてないし・・・・あれ絶対惚れてるな」

シードルの方を見ると一点しか見つめていなかった
あれは恋する目だ

「でもよかったー・・・・」
「あの子が彼女じゃなくて?」
「うん・・・・・って何か気付かないうちに誘導尋問かかってるし!」
「てか帰りの汽車の中で妙に浮かれてたけど何かあったろ?」
「何もないって!」

カシスからそっぽ向いて、窓を見る

外は桜咲き、物語の始まりを告げていた
風の始まる場所から吹く風はどこへ向かうのか、それは誰も知ることはない、だけど、何処へでも行ける。物語はこれから自分達で作っていくのだ。

いつだって、忘れずに、想ってる


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