あの時、まだあなたに言えなかった秘密がありました

言ったら全て崩れそうで

言ったら全てなくなりそうで


「・・・・・お前、今まで一体どこへ・・・」
「お前こそ、子供らはどうした?」
「今は留守番させてる、ちょっと街に花火買いに来ただけだ」

正直この状況じゃその言い訳はきついと思う

「んじゃ、とりあえずこっちも仕事なんで東雲渡してもらおうか」
「断る、てか、子供とか置いて勝手にいなくなったと思ったら、なんでこんな所に・・・・子供らがどれだけ悲しんだか」
「俺は・・・・・ユーカラさん探そうと・・・・この組織に」

「あー、あのね、シルククラウディネス、一般には出回らない国家機密レベルの情報も一応入ってくるから、そういう情報手に入れるために入ってる人も結構いるの」
「そういうことだ・・・・・というか、お前、いつからそんな女と行動出来るようになった?」
「うるせえ、成り行きだこれは、好きでいるわけじゃねえよ」

うー、ちょっと傷付く、たとえ本音であれ、嘘であれ

「というか・・・・そんなスパイまがいの多くて大丈夫なのか、シルククラウディネス」
「そこは否定できないが・・・・とにかく、その女を差し出してもらおうか」
「よし、わかった、だが差し出しても多分容易に逃げるぞこの女」

そういって、東雲をあっさり突き出すロスト

「えっ!?ちょっと、ここは「渡すもんか!」見たいなそういうちょっとキュンと来るような台詞を言って欲しいんだけど!」
「お前の希望なんか知るか!それに何とかなるだろお前なら」
「いやあ、何とかするけどさ、ここで捕まっちゃ色々困るし」
「ふん、言ってくれるじゃねえか、しかしここは逃がしは・・・」

言い終わる前に目の前から東雲は消え、気が付けばディジュディリの背後へ回り込みそのまま柄で首の後ろを一突き

「・・・せめて言い切らせてやれよ」
「油断大敵ってことで・・・・で、逃げてもいい?この人どうする?」
「・・・・多分連れて帰るのは今は無理だろうな・・・放置で」
「いいの?」
「いいったら言いんだ、いいから行くぞ」

とりあえず、そのままその場を後にして、出口へずっと向かって行く
そして、光が見えてきて、そのまま逃げれるかと思ったその時、出口に見えた二つの影と背後からかすかに感じた気配

「・・・・ビンゴだったな、ネール」
「ビンゴ」

前に人影を見つけて反射的に振り向くとこちらに向かってくる桃色の髪
すぐさま差を縮められ、挟み撃ち

「・・・・囲まれたね・・・どうしようか」
「さっきみたいにあっさり倒したり出来ないのか?」
「無理、だって入り口に立ってるサングラスの人、私居た頃にも居たけど私より強かったし、それにあの人銃使いだから相性的にも不利だし」
「そう言うわけだ、覚悟しろ」
「覚悟ー」



「・・・・・前は突破不可能に近い上に後ろは・・・」

追ってきた足音は立ち止まり、持っている薙刀をこちらにつきつけ

「もう逃げられませんよ」
「・・・・後ろはユリィちゃんか・・・絶体絶命かも」

桃色のウエーブがかった髪の毛を後ろで結びいわゆる美人的な顔をした女性・・・・ユリィ・アルジュリアが立ちはだかる

「また知り合いか?」
「うん、私居た時に少し仲良かった後輩的な子、でも凄い強いよ、私ぐらい」
「・・・・本格的にピンチじゃねえかこれ」
「とりあえずどうにかして突破口開けないと・・・!」
「・・・よし、もう考えてもしょうがない、強行突破!」

そう言って東雲が出口へ駆け出す、当然ながら、あっさり通してくれるはずも無く、グォーウ゛ァーのすぐさま取り出した拳銃の銃口がこちらを向く、しかしそれをすかさずロストがライフルで手から弾き落とす、が

「ほう、片手でライフル撃てるとは相当な握力だな・・・しかし」

次の瞬間腕に持ってたはずのライフルは宙へ

「2丁拳銃かよ・・・」
「ロスト!っうぁ!」

振り向いた瞬間目の前には薙刀が振りかざされていて

「通しませんよ?」
「久しぶりだねぇ、ユリィちゃん・・」
「結構経ちますよね、あれから、というわけで大人しく捕まって下さい」
「無理、目的だって果たしてないし、それに・・・」
「ウインレイさん・・・ですか?」
「っ!・・・兎に角、ここで捕まるわけにはいかないの!」

東雲は剣を抜き、戦闘体制に入る
そしてアリカは

「とりあえずどけてね、その紫髪の子」
「・・・」

無言で紫髪の女は手元に弓と矢を生み出す
その様子に少し驚きながらも

「・・・へえ、あなたも魔法使えるんだ・・・」
「魔法」
「じゃああたしも遠慮無しに・・・・」

そしてアリカは宙高く飛び上がりそこから急降下しながらの踵落とし
その足は彼女の肩に直撃するが、同時に矢が肩を霞める

「あれで逃げないとは・・・度胸あるのか恐怖心ないのか・・・」
「・・・度胸」
「あ、度胸なのね」

何となく変な空気ながら、戦いは続く



そしてその時ロストは

(非常にまずいなこの状況・・・・)

自分のライフルはさっき吹き飛ばされ、相手はまだ弾が残っている拳銃が一つ、ライフルを拾っている間に撃たれるだろうが、生き残るにはどうにかして相手の拳銃を使えなくしないといけない、そうしないと逃げても遠くから撃たれて捕まるのがオチだろう

だからやらなければならない、一か八かの賭けを

そして一気に後ずさりし、ライフルに触れようとした瞬間

銃口から撃ち出された銃弾は、再びライフルを弾き飛ばし

「・・・・終わりだな」

・・・死んだな
そう思い、とっさに目をつぶった瞬間、銃弾を跳ね返す音が目の前からした

「大丈夫か?」
「・・・あんたは・・」

さっき、東雲と戦っていた男、確かガイア・サンレッドが、そこには立っていた


「銃声がしたから来て見たが・・・・思いっきりピンチだな」

反論できない、間違いなくこいつが来なければ死んでいた

「久しぶりだなグォーヴァー」
「ガイアか・・・・年上には敬語使えと言った筈だが」
「実力社会そんなもん関係ないな」
「ふっ・・・相変わらずだな」

そしてグォーヴァーはコートを翻し

「撤退だ、状況が変わった」
「え?撤退ですか?」
「負け戦をやる必要がどこにある」
「・・・負け・・」

そしてグォーヴァーはこちらを振り向き

「今回は戦力も何も整ってないから撤退するが・・・次は無いと思え」
「思えー」

そうして去っていった3人、力づくでも東雲を連れて行かなかったところを見ると元々殺すつもりは無かったのだろう
とりあえずほっと一息、と同時に自分の無力さを実感する

このままじゃあ足手まといだ、帰ったらさよならのはずなのに、もう旅することも無いだろうに



「・・・・・ふぅ・・・助かった・・・・」
「とことん遠距離戦に弱いからね、あたし達・・・流石に余裕とはならなかったわ・・・」
「・・・俺無視か」
「いや、ライフルで連射ともいかないじゃん、ああいう早撃ち相手には分が悪すぎだと思うし」
「・・・ごもっともで」

とりあえず反省会は後にして、今は気になることを聞くことにする

「ていうか何であんたが助けに・・・」
「闘技場の前でさてこれからどうしようかと悩んでたら銃声聞こえてきたから、まずは無視しようと思ったんだ」
「待て」
「最後まで聞け。んでよく考えたらさっき東雲いたから、あー多分あの銃声グォーウ゛ァーだなと思って、とりあえず助けにきた」
「まあ要約するとガイアさんこれでも結構お人好しだということで」
「勝手に自己完結するな東雲」

こいつ男相手ならだれでも途端に漫才コンビになるんじゃないかとか考えたが、それは考えるのをやめておいて

「とりあえず、お礼は言っておく、ありがとう」
「・・・・見た目と違って常識はあるんだな」
「・・・初対面相手に酷くないか?ガイアさんだか」
「ガイアでいい。男にさん付けされると寒気する」
「それは同感だ」

なんだかんだで気が合ってる気がする男同士を見ながら東雲とアリカは

「・・・・凄い喋ってるね、ロスト・・・」
「まあ女の子苦手なのに女の子二人に囲まれてれば反動で凄い喋るだろうねえ・・・普段無口って訳じゃないけどさ、ロストくん」
「・・・何か悔しい」
「・・好きなの?」
「・・・・んー、どうだろ、わかんない」
「なんだそりゃ・・・」

わからない、恋愛感情なのか、ただ気に入ってるだけなのか、これからも一緒にいれれば分かるのかな、できれば一緒にいたいけど


「さて・・・ここにいるのも危険だし・・・さっさと帰ろうか」
「何処にだよ」
「ロストんとこへ、花火買うんでしょ?せっかくだからみんなでやろうよ」
「断る」
「俺も含められてるのか」
「あたしは別にいいけどね」
「・・・・誰か反対して・・・」

そこでガイアが

「あ、でも俺は無理だぞ、一刻も早く帰らないとヤバいから」
「何がヤバいんですか?」
「いや、ちょっと今住んでるところがコウ゛ァマカだから船の時間とかあるしな・・・・」

目をそらしながらそう言うガイアに少しだけ違和感を感じながら

「早急に帰らないといけない用事でもあるんですか?」
「そう言うわけでもないんだが・・・・待たせると悪いし・・・」
「え?」
「何でも無い、それじゃ、俺はもう行くぞ」

そう言って逃げるように去ろうとするガイアをすぐさま東雲は肩をつかみ

「まーまー、いいじゃないですか、一日ぐらい遅れても」

にっこりと微笑みながら言う、この笑顔で見られると断れなくなる気がするのは気のせいではないはず、とこの光景を見ながらロストは思った

「・・・・まあ一日ぐらいいいか・・・」
「よし決まり!じゃあ早く帰ろー!」
「でもさらに二日はかかるぞ、こっから」
「そうなんだよねえ・・・遠いんだよねえ・・・」

少し途方に暮れかけたその時

「・・・・・汽車乗ればいいんじゃないのか?」
「いや、山の中だし・・汽車なんか・・・・あ、そうか、シールラ村まで汽車で行ったら早めに着くか・・・」
「あー、私が酔っぱらったあの街?」
「そう、あそこなら汽車あるしおまえが一晩で登って来れたし・・・・小さい街だけど、そっから少し歩けば海があるし、船もあるだろうよ」

シールラ村・・・あの日酒場で酔っぱらってなければこの出会いも無く、きっと一人で旅を続けていたのだろう、ずっと一人の旅だったが、やはりこう人といると幸せなわけで、不思議とあの頃に戻りたくないと思ってしまう、それまでずっと一人だったのもあるけど

「んじゃ、汽車に乗って・・・・ってここまでもそれでくれば良かったんじゃないの?」
「あの時点で金ねえだろお前」
「あ、そっか、あっても酒代に使ってるね、きっと」
「馬鹿だろお前」
「馬鹿じゃないもん」

このやり取りにも既に慣れはじめている
人間の適応能力って凄いと心から思う



とりあえず、その後もあーだこーだ言いながら
汽車に乗り込み、シールラ村に着いた頃には日も暮れかけていた

「やばいな・・・早く登るぞ」
「だね、子供たちも心配でしょ?ロスト」
「おう、まあ大丈夫だとは思うんだが・・・・」
「ねーねー、どんな子達なの?」

「可愛いよー、意外と15歳とか年齢近い子もいるけど」
「かなり生意気だけどな」
「えー、みんな素直だよー、多分ロストにだけだよ、生意気なの」
「うるせえ馬鹿」
「馬鹿じゃないもん」
「・・・・いいから登るぞ、3人とも」

そして2時間ぐらい登っただろうか、森をくぐり抜けて見えたあの洞窟
洞窟の前には二人ぐらい人が居た、一瞬警戒してこちらを見たが、すぐさまロストだと確認し、こちらへ全速力でやってくる

「ロストお兄ちゃんおかえりー!!」
「ちゃんと帰ってきたね、少し安心」
「カルカ、ロット、ちゃんと留守番してたか?」
「大丈夫だよー不在中の警備はばっちりでした!」
「偉い偉い」
「兄ちゃんの隠してたお菓子もばっちり全員で食った!」
「待てや」

とりあえず洞窟の中へ走って行ったロットとロストを見送りながら
カルカが

「と、とりあえずみなさん、中へどうぞ」
「あたしたちもいいの?」
「ええ、お兄ちゃんと一緒にいるってことは多分悪い人ではないでしょうし」


案内されて中へ入って行く、そういえばまともに入ったのは初めてなのか、前来た時は攫われてたし

「あ、東雲お姉ちゃんだ!あと・・・」
「アリカです、よろしくー」
「ガイアだ」
「アリカさんにガイアさん、よろしくー」

自己紹介も済んだあと、子供達のマシンガン質問とか感想ラッシュが再び始まる

「うわー背でけえー」
「zzz・・・・・」
「東雲さんお久しぶりです・・・」
「・・・・」
「ロストお兄ちゃん何処行ったんだろう・・・?」
「和服・・・・キラキラ・・・赤髪・・・」
「人の密度多いなおい・・・・」
「数日ぶりの東雲姉ちゃんの髪の毛ー」

この状況のアリカとガイアの感想

「・・・凄まじいな・・・」
「元気あっていいねえみんなー」
「元気すぎるのもどうかと思うが・・・」
「・・・子供苦手なの?」
「うっ・・・慣れてないだけだ・・・」
「案外可愛いところあるんですねえ」
「うるせえ」


そして全員で、買ってきた花火をやることにした、ガイアさんが最後まで嫌がったが強制参加となった


「何で俺が・・・・」
「まあいいじゃないですか、たまには、何年もやってないでしょ?」
「それがあいつが花火買ってきて・・・・・いや、なんでもない」
「?」

妙に再開したときから動揺しっぱなしのガイアさんが気になりながらも
とりあえずみんなで外に出て花火をする、あの夜に初めてまともな会話をした場所で



「・・・・・随分買ってきたな・・・」
「いや、人数相当いるだろ?少し奮発した」

その場に並べられた花火セット4セット
でも確かにこの人数ならすぐ無くなりそうだった

「じゃあ始めよっか、風吹いちゃう前に」
「だね」



夜空の下、騒がしい中で花火は始まった

子供達ははしゃぎ回り、所々にロケット花火が飛び交っていたり
ネズミ花火が5個ぐらい暴れてたり、微妙にガイアさんがおもちゃにされてたりと、色々な事が起っていた

そんな様子を眺めながらのそのそと線香花火を持ってロストの元へ

「線香花火やろー」
「いいけど、もう少し距離をとれ馬鹿」

その馬鹿と言う言葉もなんだか慣れてきた
心地いいかのように

二人で線香花火を見つめながら

「ここ数日ホント楽しかった、久々だなあ、人といれたの」
「どれぐらい一人で旅してたんだ?」
「んーっと、シルクラから抜けてからだから・・・・半年位かなあ」
「・・・・もしも、その探してる弟がもう死んでたりして、見つける事できなかったらどうするんだ?」

その質問に一瞬東雲の表情が少しだけ曇ったが、すぐに空を見上げて

「それでも・・・・ずっと探す、諦めたら私の人生そのものが終わっちゃうもん、それに・・・・」
「それに?」
「あの子、昔からもの凄く運が悪いの、確率的に天文学的に低い確率の悪い事も普通に起るし、おみくじで凶以外引いたの見た事無いし」
「・・・・・そりゃあもの凄い弟をお持ちで・・・・」
「でもね、命に関わる事は奇跡的に回避してたり、悪運だけは強いのかも、運の反対っぽいし」

弟の話をしている東雲は今までに無いぐらい嬉しそうにしていた

「だからきっと、いや絶対どこかで生きてる、そう信じてる、それが私の生きて行く意味になるから」
「・・・・・そっか」

生きてく意味・・・・・そんなこと考えた事も無かった
ここで子供達と生きて行き、生きるために物を盗み、そしてあの人の帰りを待つ、そんな毎日でいいのだろうか、もっと外の世界を見て、もっと色々な事を知って・・・・・
でも多分今は無理だ


「・・・・俺もいつか旅に出てえなあ・・・・」
「じゃあ一緒に行こうよ」
「今は無理だ、子供達の事もあるし」
「そっか・・・残念」






「・・・・なんだろう、あの入り込めない空気・・・」
「ラブコメってるな」

一方のアリカとガイア組、子供達に紛れて花火実施中

「はー、うらやましいなあ・・・あたしなんて今までそういった事にほとんど縁がなかったからなあ・・・・」
「・・・・なんだその目は」
「いや、ガイアさん恋人いるのかなあ・・・って」
「・・・・・・」

逃げられた

「・・・・あの反応・・・すごい怪しいんだよなあ・・・」

ふうっとため息付いた後、空を見上げて

「・・・・兄貴元気かなあ・・・・」
「ねーねー、アリカ姉ちゃん!」
「あ、どうしたの?・・・えっと・・・ロットくん」
「ロケット花火しよ!」
「うん、いいよー・・・ってあれ止めなくて大丈夫?」

指を指した先にいるのは、ロケット花火を数十本持って東雲へ向けて発射しようとしているカルカ

「私のロスト兄ちゃん・・・ここで東雲お姉ちゃんを葬り去って・・・」
「やめろカルカー!落ち着け!」
「やだー!私のなのー!」

なんとか殺人を未然に防いだり、ガイアさんが帰ってきたのでまた色々聴こうとしたりしながら、夜は更けて行った


あの夜空はいつもより、とても綺麗でした




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