現代、喫茶店の扉の前にはメイド服と巫女服を無理やり合わせたようなファッションの人と
赤い髪をポニーテールにした人が立っている
喫茶店は一瞬静粛に包まれたが、そこで隣のセピアが

「時を遡る方法なんてあるの!?」
「うん、あるわよ♪」
「セピア、多分それ俺が言うべき台詞・・・」
「言ったもん勝ちよ、カザネ、文句ある?」
「いや、結構あるけ・・・がふっ!」

それを言ってる間に、腹に激痛が走る、文句言うのは無しですか、そうですか・・・
こういうときは素直に従うのが一番なので、とりあえずスルーする

「・・・んで、どうやるの?何か必要なの?あんたら何者なの?」
「質問多すぎるだろ・・・・えっと、まずはどなたですか、あなたたち」
「私たちは時の管理者、まあ下っ端だけどね♪」
「あたしがフロルージュ、この子がアリス、ユーラナス以外は初めましてだね」
「知り合いなんですか、ユーラナスさん」
「うん、結構知り合いなんだけど・・・・」

そういうとユーラナスさんはその二人に詰め寄り

「時の管理者って何よ、聞いたこと無いわよそんなこと」
「言う必要ないかなあって♪」
「言っても意味無いしね、時を遡る必要も無い人に無駄に知識与えるなってうちの所長も言ってるし」

それを聞くとユーラナスさんは、はあっとため息をついて、まあいいやと納得したのかカウンターに戻り

「まあその所長さんの言ってることには同意するし、この隠し事については許すわ」
「ありがと、ユーラナス♪、さて、まあこんな感じで自己紹介は終わりかな♪」

不思議な喋り方というか、歌うように喋る人だなあっていうのがアリスさんへの第一感想だった
とりあえずこちらも自己紹介をする事にする

「カザネです、んでこいつがセピア」
「カザネ君にセピアちゃん、よろしく♪、まあ君達のおねえちゃんはしってるんだけどね♪」
「・・・うちのねーちゃんの知り合いですか、そんなに交友関係広かったのかねーちゃん・・・」
「達って・・・あたしおねーちゃんいないけど・・・」
「まあ勢いでね♪とりあえず話進めようか♪フロルージュ、説明お願い♪」

また勝手に話進めて・・・とぼやきながらもフロルージュさんは説明を始める

「うん、まあ時の管理者っても下っ端だから、そんな自由に飛べるわけじゃないんだ、出来て一日に往復1回、
ただ空間飛ぶだけなら三回かな、限度は」
「でも一回でも出来るならそれで・・・」
「いや、駄目なの」

俺の顔の前にピッと静止するように手を出し
言葉を続けてフロルージュさんはこう言った

「現状どうして君のお姉さんが悩んでるのか分かってないし、そもそも400年前のどの日に何処にいるのかもわからない
、目的も無く時間を遡るのはやってはいけないことなの」
「でも・・・それならこの問題が解決しようがないんじゃ・・・というかなんでそれで悩んでること知ってるんですか」
「扉の前で聞いてたから♪」
「勝手に店の前で立ち聞きしないでよ、せめて入ってよ・・・でもそれが問題なら解決できそう・・・」
「何でですか?まったく解決の糸口がつかめないけど・・・」
「・・・・私の知り合いにね、いるのよ、何かそういうことを無駄に知ってそうな人が・・・」
「ホントですか!?誰ですかそれ」
「ピアス・レッドレイって子なんだけど・・・・占い屋とか情報屋もやってるからそれの繋がりで知り合いなの。
でも連絡付けるの難しいよ、基本何処にいるのか分からないし、偶然ここに来ることもあるし、
1年以上見かけなかったりもするし、3日置きに来ることもあるし・・・・」

そりゃまた厄介なほど神出鬼没で・・・・
でもその人探すしかないのか・・・解決策としては
するとふとフロルージュさんが

「ピアスねえ・・・・噂はよく聞くけどね、主に悪い噂で」
「悪いって・・・そんな悪人なんですか?」
「いや、悪人というよりかかわりたくないような人種、言うこと全て胡散臭いというか、
時空を遡るときは普通の人間は時の管理局って場所、まああたし達の職場なんだけど、
そこ経由しないといけないんだけど、数人だけ経由しなくても時空や空間を行き来出来る人がいるんだよ、この世界中で」
「そのうちの一人がそのピアスさん・・・ってことですか?」
「そう、基本的に時を越える時は本当はうちを経由しないといけないから、そして経由した人は一応何処の世界から来たかとか、どの時代から来たかとか記録されるんだけど・・・彼女それないからねえ・・・・行方がつかめないというか・・・・」

要は少ない時空移動チャンスだから、ピアスさんを探すのは相当効率が悪い・・・というわけですか
確かにそのとおりだと思う、話を聞いた限りでは

「でも・・・・他にあてはあるんですか?」
「無いよねえ・・・・・大変だけど探す?」

まあ探して手がかりがつかめるのなら・・・・
行動しないよりはましか・・・・というか、なんだか分からないけど、今日のうちに探したほうがいい気がする、
なぜか分からないけど、でもそんな予感がする

「さが・・・・します」
「そっか、んじゃまずは基本的に前まで彼女がいた世界へ行こうか、えっと・・・・そこのカボチャ頭の男の子の住んでる世界ね」
「うえ、俺達の世界に来ンのー?てかなンで分かるの?」
「一応その世界の匂いとか雰囲気がね、もっとも判別できるのあたしぐらいだけど」
「そうそう、私には無理♪、じゃ、その世界へれっつらゴーってことで♪」


そういうとさっそくアリスさんは聞きなれない呪文を唱え、早速半径1mぐらいが、光り輝く


「ちょ、アリス急過ぎ!タイミング間に合わないって・・・あ」
「あ、ごめんごめん、焦り過ぎた♪」
「もう普通に発動しちゃってるから遅いって!このままだと多分・・・」

そうフロルージュさんが言いかけたところでユーラナスさんから何かが投げ込まれた気がしたが、
それが何か判別できないまま、意識がブラックアウトした。







「いっちゃったねえ・・・・ちゃんと資料掴んでればいいけど・・・・」
「何投げ込んでたの?」
「ピアスの顔写真とかその他もろもろ、無いと辛いでしょ、多分」
「そうねえ、さすがに顔無しじゃ辛いわよね」

喧騒が去った喫茶店、ユキとユーラナスのアルジェリー姉妹が
カウンター越しに会話をする
客もさっきまでの喧騒が無かったかのように再び自分達の会話へと入っていく

「ユキ姐、あのさ、聞いてくれる?」
「どうしたの?」
「さっきついでにカザネ君と一緒にいた子いたじゃん、セピアって子」
「ああ、いたわね」
「さっきついでだからさ、その子のことも調べたんだけどね」
「プライバシーもくそも無いわね」
「職業病よ、したらね・・・・・無いの」

しばし沈黙が続いて、姉がポツリと

「今日の話聞いてたらあんた無能みたいに思えるわよ?」
「なっ・・・!だってホントに無いんだもん、信じてよー」
「信じるわよ、私相手に嘘付いても仕方ないしね」
「さすがにあの子自体が何も言ってなかったから言うのはやめておいたけど・・・・」
「・・・まあ、私達が気にすることじゃないわよ、それよりコーヒーおかわり!」
「はいはい・・・何も無ければいいけど・・・」


























そしてこちらはとある酒場
そこにいたのは茶髪の少し背の小さな少年と金髪の綺麗な女性・・・ではなく男性
茶髪の少年の名前はスカイ・セットウインド、金髪の一応男の名前はシェイクスピア・チェーンクロス、
双子の姉がいるので大抵スピアと呼ばれている

「おいスカイ、こんなところ呼び出して何の用だよ?酒有るからかまわないけど」
「いや、今日呼び出したのはさ、あの人に呼ばれたから一応ね」
「あの人?」
「うん、あ、来た来た、こっちですー」

酒場のドアが開き、そこからこちらへ歩いてきたのはオレンジの髪を首の辺りで結んだ女性

「あ、いたいた、おはよースカイ君にスピア君」
「東雲さん、こっちです」
「あ、どうも、東雲」

その女性・・・・東雲さんはこちらの姿を確認すると小走りでここの席へ寄ってきて 

「ごめんね、昨日急に呼び出して」
「いえいえ、知り合いの依頼なら飛んできますよ」
「てか呼び出しが急じゃないときあったか、東雲に」
「ん、たまにあるよ、ホントたまに」
「自分で認めるなよ・・・」


とりあえず席に着き、本来の目的を相談される
まあ酒場にいるので思いっきり酒が入ってるわけだが・・・・ここにいるメンバーは総じて酒には強いわけで・・・・

「・・・・酒で会話がおかしくなるとか無いのがつまんない・・・」
「何か言った?スカイ君」
「いえ別に・・・・で、あれの件ですけど・・・・とりあえず見つけたんで、はい」

そういってスカイは持ってきたバックから何かを書いた紙を取り出し、東雲に差し出した

「あれですね、一応その二人が住んでるのは向こうの世界で、その中でも辺境に住んでるみたいです」
「いや、ホントにお疲れ様、ありがとう」
「それ調べたの俺だけどな・・・・久しぶりだぜ密偵の仕事・・・最近本業忙しくて休業中だったし・・・」

スピアが疲れたような顔でそう嘆く、最近酒の席じゃ愚痴ばっかり言ってる気がする・・・スピア

「それで、もうひとつの頼みって?」
「うんとね、そのスカイ君が持ってる剣あるじゃない、空凪の方」
「ああ、このどっか飛ばされたときに貰ったやつですか?」
「そうそれ、あのね、それを譲って欲しいのだけど」
「うーん・・・それは今回のこの調べものに関係あるんすか?」
「うん、でも多分その結果、借りても返せないと思うの」

スカイはうーんと少し悩んだあと、納得したのか
剣を差し出し

「わかりました、どうぞ」
「いいのか?そんなあっさり渡して」
「大丈夫、ちゃんと自分の刀持ってるし」

そういって腰にさした刀を見せる、基本的にメインはこっちだし、二刀流というわけでもないので
こういった知り合いのたっての願いなら渡しても惜しくは無い

「色々ありがとね、あのさ、最後にもうひとつだけお願いがあるんだけど・・・」
「あれですよね?辺境に空間移動したいって事ですね?」
「うん、後ででいいからさ、お願いね、とりあえず今は目の前のお酒を楽しみましょ」
「そうっすね、それじゃあ、乾杯」
「さっきからスピア結構飲んでたけどな」
「だって酒場に来てんだし、飲まなきゃやってられねえよ・・・」

やさぐれながら酒を一気飲みするスピア
果たして彼に何があったのか・・・まあペース的にはいつもと変わらないんだけど






しばらく飲んでいると酒場のドアが開いた、ふと見てみるとそこには・・・

「あー!、やっぱここにいたー!」
「探したわよ、スピア」

水色の髪の女性とスピアによく似た女性・・・・マイナ・ミルキーピンクとスピアの姉、シェイクがそこにはいた

「げ、シェイク・・・なんでここに」
「スピア、今日家の模様替えの手伝いしてくれるっていってたじゃない、自分で言っておいて忘れないでよ」
「・・・・めんどくさい」
「いいからやれ、どうせ今日みんな出かけてるからここいるんでしょ?」
「・・・和刃はレイのところ行ってるし、亞希はツカサが朝に来たから逃げてる・・・せめてもうすこし酒飲ませてくれ・・・」
「・・・・まあ急ぐことでもないからまだいいけど・・・・じゃ、私達も相席させてもらおうかしら」

そういうとシェイクとマイナは横の空いてた席に座り

「なんか急ににぎやかに・・・てかマイナ留守番頼むって言ったろ・・・」
「だって最近かまってくれないんだもんスカイ、いいもん、久々に酒飲んでやるんだから」
「ちょっ、俺の酒飲むな・・・ってかお前酒飲んだら・・・」

マイナはごくごくと一気に酒を飲む、そして数秒たつとどんどん顔が赤くなっていき・・・
しばらくぼーっとした後・・・・

「むにゃ・・・・スカイー」
「・・・・だから飲ませたくなかったんだよ・・・」

マイナの酔い方は・・・絡み酒・・・しかも妙に・・・

「ねーねー・・・んー」
「だから・・・ん・・・ぷは・・」

マイナは酔うとある意味エロ酔い状態になる・・・二人でいるときはかまわないのだが
こう人がたくさんいる場所で酔われると周りの視線が集まって恥ずかしいというか・・・
だから酒場に行くときは絶対誘わないようにしている・・・

「わーお、大胆だねー、マイナちゃん」
「・・・いつもマイナ連れて来ない理由が今分かった・・・ドンマイ、スカイ」
「とりあえず、この場から去ったほうがいいかもね、注目浴びたくなかったら・・・」

たしかに、この周りの視線浴びながらここにいるのはつらい・・・
とりあえずマイナを抱えながら席を立ち

「それじゃあ、あとで俺ん家来てください、それまでには多分マイナも眠ってるから出てこれるんで」
「ん、じゃ、後で空間移動魔法よろしくね」
「はい、行くぞマイナ」
「んー?ベッド?」
「違うっての・・・よっと、それじゃまた」

そういってスカイはマイナをお姫様抱っこで抱えながら、店を出て行く
その後姿を見送りながら東雲は

「んー、なんというか恋人の貫禄というか、愛があるねえ・・・」
「・・・・彼女欲しい・・・・」
「スピア・・・完全に酔ってるわね・・・いつもより妙に早いけど」
「私より早く酔うなんてめったに無いのに・・・目の前でべたべたされて多分色々思うことがあったのかもね」

そう言う東雲の目もどこか寂しそうで
理由は分からないけど、スピアとはまた違う悲しそうな目
普段はあまり見せないその姿を見ながらも、酒場の時間は過ぎていった


























所変わって・・・・

「師匠、アリスとフロルージュが無断で空間移動してるみたいなんですが・・・」

とある場所、とある一室で、茶髪の女性がアリスとフロルージュ二人の行動について
報告をしていた

「ふーん、そう、ロージィ、報告ありがと」
「止めましょうか?」
「別にほっといても大丈夫よ、特に問題も無いし」
「でも規律としては・・・」

すると師匠と呼ばれている女性ははあっとため息をつき
茶髪の女性・・・ロージィの方を向き微笑みながら

「規律なんてね、破ってナンボよ、規律に縛られた人生なんて楽しくないでしょ?」
「それはそうですけど・・・」

じゃあ何でそんな規律があるんだろ・・・とふと思ったけどこの人に対してそういったことを聞くのも
多分効果が無いのでやめておいた
まあこういった集団を運営するには形だけでも規律とかないと纏まらないからだとは思う

「じゃあほっときますけど・・・一応報告したかっただけなので」
「あ、そうそう、時空いじる準備しておいてね」
「どこか行かれるんですか?」
「ん、多分今日中に必要になると思うから、よろしくね」
「わかりました、準備しておきます」

そういってロージィは部屋を後にする、その後姿を見送った後
師匠と呼ばれた女性・・・・ウィスティリアはその水色の髪の毛をいじりながら電話を手にとって

「・・・・・・・・あ、白昼?お願いがあるんだけど」
「ん?なんすか所長、俺様にデートの誘いですか?」
「私とデートしようなんて100万年早いわよ、次その言葉口にしたらランダムでどこか出張させるわ。
そうじゃなくて、あなたの友人に紅柊って子いるじゃない」
「ああ、あいつですか、あいつがどうかしました?」
「ここに呼んで来て欲しいのだけど、頼める?」
「了解ー、今日中ですか?」
「ん、早いほうがいいわね、それじゃよろしく」

電話を切り、イスに腰掛けてウィスティリアは
ふとと妖しく微笑みながら

「久々に忙しくなりそうね・・・ま、色々あったほうが楽しいわけだけど」

その青い瞳には何が映るのか
とても機嫌がよさそうに彼女は先を見つめた







運命の歯車は

だれにも行き先が分からないまま

役者をそろえつつ開幕する




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